独自化

マーケティングの世界。コストリーダーシップ、差別化、集中化という3つの戦略が提唱されてきた。
その中で、集中化は、文字通り選択して集中することだが、戦略というよりむしろ不可避なものだ。
世の中では、やり得ることはどんどん増えているが、その中でも自分でやれることは限られている。
したがって、集中した事業で、どう戦うかがより重要になる。コストか、差別化かという具合だ。

日本はコストリーダーシップ戦略が得意だ。衣食住などどんな分野でも至るところで見られる。
もちろん、成功しているところは、単なる安かろう悪かろうではない。時流に合わせた工夫もある。
使わない機能を省く、オペレーションを極める、言葉やデザインの力を使う、品質に妥協しない。
その結果、消費者にとってはとてもお得で嬉しい世界が広がっている。諸外国と比べても段違いだ。

一方、差別化はどうだろうか。差別化とは「顧客にとって価値が増加すること」と定義されている。
「単に他と違うこと」ではない。あくまで「独自の価値が認知されていること」が差別化だ。
日本一のマーケターに聞いた。「差別化」は「独自化」の方が良いという議論があったらしい。
独自であること、ユニークであることを認知してもらい、より大きな対価を頂く戦略と言っていい。

もちろん、日本にもプレミアムと評されるものも沢山ある。ブランド独自の世界観が差別化だ。
でもブランド価値は欧州勢に分がある。日本にも歴史や伝統のあるものが沢山あるので少し残念だ。
ストーリーに仕立てて、ありとあらゆる接点でしっかりと伝えていく。もう少しやれるはずだ。
控えめが故に、歴史や伝統が「知る人ぞ知る」になっている。後世に伝えるためにも頑張りたい。

でも、なによりやるべきは、やはり独自の新しい商品やサービスを生み出すことだと思う。
顧客にとっての独自の価値を提示して試してもらう。新たな歴史や伝統の種を蒔くイメージだ。
コストリーダーシップ戦略もあっていい。でも、絶対値でワクワクのあることを増やしたい。
もう効率化の巧さを競う世界から少し抜け出したい。独自化を楽しむ世界をみんなで楽しみたい。