雇用のあり方

最近耳にするジョブ型雇用とは、その名の通り、職務を規定して、それを遂行できる人を募集する方法だ。
ジョブ、つまり職務が明確なため、期待する成果物やそれに掛かる作業時間の見積もりも比較的容易だ。
一つの大きな仕事が分業可能なジョブに切り分けられ、それぞれのスキルを持った人に割り当てられる。
故に指示も曖昧さはなく、専門スキルを使って迷いなく効率的に作業が進められる。リモートとの相性も良い。

欧米では一般的で、専門が高い人が育つ基盤となっている。ジョブ型で人材マーケットも形成されている。
プロジェクトが組成されると、必要なジョブの種類と量が見積もられ、人材の獲得が始まる。
もちろん、グローバル規模での募集となり、専門スキルやそのレベル毎に報酬も設定される。
多数のプロジェクトが走っていると、職種によっては供給が需要を上回り、報酬が高止まりする場合もある。

評価は成果主義。各プロジェクトの記録が詳細に残る。そしてそれらの蓄積された情報で人材獲得が進む。
故に、各人は規定された職務をどれだけ充足できたかに拘る。規定以外の業務には決して手を出さない。
もし、プロジェクト自体が失敗したとしても、自分の職務の完璧さと自分に失敗の責任がないことを証明する。
成功すれば、もちろん、自らの成功への貢献が大きいことを見事なまでに論理的に証明する。

ふと、疑問が湧く。大きな仕事は明確に規定された沢山のジョブの組み合わせでやり遂げられるのだろうか。
仕事をやる前から、沢山のジョブの中身がそれなりに正確に見通せているのだろうか。天才がいるのだろうか。
確かに欧米には広範囲に見通して、構想を打ち立てる人材が少人数いるような気がする。かなり凄い。
その天才がジョブを各々が可能な限り独立な形に切り分け、ゴールに向かってまっすぐに進んでいるのだろう。

でも、やりながら考える部分や突然の発見で想定とは異なる部分があっても良い気がする。
特に、商品やサービスのマイナーチェンジではなく、新価値創造においてはその部分に頼りたくもなる。
マイナーチェンジなら、仕事の全体像は見通せる。作業に落とし込める。だからジョブ型が効率的だ。
一方、新価値創造ではメンバー間の化学反応で生む想定外を、走りながら価値に仕立てていくことこが大事だ。

ゼロイチの議論ではない。ジョブ型もいるし、職務をはみ出し構想づくりやその実現に力を発揮する型もいる。
ジョブ型で能力レベルを突き詰めたい人もいる。一方で、構想を生み出す化学反応にワクワクする人もいる。
色々あっていい。でも構想作りやその実現に没頭する人を増やしたい。日本には新価値創造が必要だからだ。
職務をはみ出し、新価値創造に邁進する職務、ジョブ。こんなジョブをまずは10くらい定義しようと思った。