行動展示の威力

動物を自然の生態のまま、生き生きと活動してもらう。その姿を人に見せる。
とんでもなく当たり前のことだと、話を聞いて見れば誰もが感じると思う。
この行動展示は、旭山動物園が世界で初めて導入した展示コンセプトだ。
展示がリニューアルされた後は瞬く間に入場者数が10倍以上に増大した。

大事なことは本質的であること。誰もがその方がいいに決まっていると感じること。
何せ、動物が生き生きと過ごせる。檻の中にいることを思わず忘れてしまうかもしれない。
動物園の動物といえば、隅の方でうずくまっているのが常だったが、動き回っている。
病気も少なくなったと思うし、飼育員も明らかに楽になったに違いない。

他の動物園もこぞって真似をし始め、至る所に波及した。誰もやれとは言っていない。
展示の工夫もこのレベルにまでいくと圧倒的だと言わざる得ない。凄いの一言だ。
では、動物園以外でこんなことは起こせないのだろうか。確かに生き物を扱うのは少ない。
水族館はあるが、基本は行動展示のカバー範囲だろう。では見るものは動かないのが前提だ。

絵やオブジェ、古文書や歴史的な逸品。アートの領域はどうだろうか。
残念ながら、ガラスの中に鎮座しているだけなので、新たな感動を作りにくい感じがする。
となると、やれることはガラスの中から飛び出させるか、人がガラスの中に入り込むかだろう。
民族史の博物館ならタイムスリップだろうか。描き手が飛び出してきて一緒に描くだろうか。

見るという受動的な行為ではなく、自分でやるの能動的な行為に変えてみたいと思う。
行動展示だったら、生き生きとしたイルカと共に泳いでみる感じだろうか。
砂遊び、水遊び、模写、現代アート。どれも子供たちが夢中になりそうなものだと思う。
美術館や博物館に汗を流しにいく。創作活動をしにいく。それを基本とする世界を作れないだろうか。