自然科学者から経営コンサルタントに転身したのは25年前。かなり突然の行動だったと思う。
第一線で活躍されていたコンサルタントに出会ったのがきっかけだった。凄い人だった。
なにより、目の輝きが半端ない。思考の速度が速い。お酒も豪快に飲まれていた。
当時、コンサルタントといえば、ロジックはもちろんだが、個性や人間力が武器の時代だった。
「こんな世界の人がいるんだ」と頭の片隅に置いてあった。そんな時、日経新聞の広告が目に入った。
前職の会社が最初で最後に出した採用広告だった。当時は大学の教員だったが、面接に行った。
出てきたのは当時の社長だ。かなりビビった。でも言われた言葉は「お前学院か、俺も学院だ」だ。
「そうです」と答えたら、「じゃあ、うちに来い」となった。本当にこれに近いやりとりだった。
流石に迷ったが、社長の豪快な決断に度肝を抜かれたこともあり、1ヶ月後にはその会社にいた。
でも、最初の数ヶ月はつまらない日々が待っていた。あるのは調べ物だけ。技術的なものがくる。
できないことはなかったが、とにかくつまらない。原因は何がしたいかが分からない調べ物だからだ。
目的がない調べごとが極めて苦手なことに気づいた。どこまで調べればいいかも分からなかった。
恐らく、当時の上司はとても扱いづらかったと思う。なにせ、相手の見えない仕事はできないからだ。
別に手を抜いていた訳ではない。何をしていいかよく分からないから、仕事が進まなかった。
相手の想いや考えが見えたら、俄然仕事の質が変わった。でもここでも問題は起こった。
会社が相手だと、相手は色々いるのだ。一人のやりたいことの実現では意味がない現実があった。
そこで始めたのは、「今回はこの3人のやりたいことを同時に満たす」だった。これが楽しかった。
その3人の話を聞いたり、動きをみたり、とにかく観察や分析を進める。そして仮説を作り出す。
調べ物もしたが、仮説が先で、その検証で調査をする方がゴールに早く近づけることにも分かった。
注視する人数はだんだん増えていった。組織の慣性力も見るようにした。企業が生き物に見えてきた。