自動化への挑戦

家電製品や家具を組み立てる作業はまだまだ人の手で行われていることが多いと思う。
もちろん、内部に組み付ける電子基盤の生産や一部の搬送作業などは既にロボットがやっている。
でも、家電製品や家具は、仕様変更・機能追加、もしくは個体差があるので、自動化はしにくい。
せっかくプログラムを組んで作業を実現しても、製品変更に伴うプログラム変更がすぐにくる。

位置決めも問題だ。人の場合は両手と目を使い微調整しながら組み立てるが、これは意外と凄技だ。
最近まではロボットは厳密な位置座標を与えなければ動くことができなかった。極めて堅物だった。
今は、だいたいの動き方や掴み方をカメラでAIに学習させれば、人のような微調整が可能になった。
とはいえ、コピー機を1人で組み立てる凄腕の職人に比べてしまうと、速さでは遅れをとる。

それから、人の位置決めが凄いのは、両方の手があることだ。ペンの蓋と本体を考えて見て欲しい。
机の上にペン本体と蓋がバラバラに置いてあり、蓋を閉めるという作業だ。これは意外と難しい。
本体と蓋を其々の手で持ち、角度を調整しながら位置を合わせ、蓋を閉める。空中で位置決めだ。
プログラムで全てを書き切るのは難しい。AIがカメラの映像を見ながらロボットハンドを動かす。

ロボットは位置決めを位置の固定された治具に押し当てて行うこともできるが工程が増えてしまう。
さらに凄いのが人の手の汎用性だ。ロボットハンドの吸着や挟み込みとはかなり違い高機能だ。
利き手なら、本体と蓋の向きを工夫して片手で掴み取り、手のひらの中で蓋を閉めることも可能だ。
位置や向きの多少の違いなどお構いなしに、蓋を閉める。片手でお箸を使うのだから当然だろう。

見方を変えると、人の作業が凄いのは当然にも思える。人が組みたてるのが前提の設計だからだ。
ロボットは手のひらとは別のハンドを持ち、ざっくりではなく、極めて高い精度と持続性を持つ。
こうした特徴を活かせる部品をゼロから設計して、その部品にあった生産ラインで組み立てる。
そうすれば、一気に自動化は進むと思う。経済合理性を見極めながら価値のある自動化を進めたい。