シーンを切り取る

良いモノを作ればたくさん売れる。これ自体は今の時代にも当てはまる。
但し、「良い」とは相対的なので、類似のモノが氾濫する世の中では「良い」には中々届かない。
そこで出てきた差別化の手法が、使い方の提案や使うシーンの演出だ。コト消費だ。
これには、どう使うのが良いかだけではなく、その使い方を実践する機会をも提供する。

これまではモノを作って、手離れよく売り切る形で商売していたメーカーには難易度が高い。
修理・メンテナンスなどモノの状態を元に戻すのは得意だが、使い方は購入者任せに近かった。
頭では分かってていても、コト消費にどっぷりと浸かれないのも分かる気がする。
基本機能に過度に力が入り、自らの遊び心や購入者の創造性を掻き立てる何かが不足していた。

コト消費を生み出す上で大事なのは、やはり日常のシーンを妄想できるかだ。
既に顕在化しているお困り事を捉えれば、それを解消、むしろ楽しみに変える妄想を作ればいい。
その際、一つの自分が作ったモノだけで解決できるとは思わないことだ。
そこにある別のモノやその場にいる人の力を借りて、総合力で楽しみを演出していく。

潜在的なコトを生み出すにはどうしたら良いだろうか。シーンの切り出し方がポイントだと思う。
あるモノを活用するのが前提だとしたら、そのモノの周りに生まれるシーンを洗い出すことだ。
例えば、オフィスのカメラ。シーンは、誰もいない深夜、始業前の掃除の時間、パラパラと出社。
更には、来客、ミーティング、ランチ、ディナーなどなど。それぞれでありたい状態は異なる。

ありたい状態にバリエーションを作ればいい。それをカメラと何かを組み合わせて実現していく。
電車のカメラなら、車庫にいる、メンテを受ける、駅に向かう、お客を乗せる、走る、信号で止まる。
カメラが動くから映るものは線路が敷いてあるところの周辺全てだ。スピードで解像度も変わる。
この場合も多様なシーン毎にありたい姿を沢山妄想できる。なにかが生まれる予感がする。