場の空気を変える。

昨日は演劇の鑑賞に行った。3時間くらいの演目で久しぶりの「生」を満喫した。
出演者は錚々たるもので、巨匠と言っても良い方が4人は間違いなくいた。
ただ、驚くべきことに、その4人の活躍するジャンルが全て違うということだ。
俳優、歌劇、そしてジャンルの異なる芸人2人だ。一緒に何ができるのか疑問しかなかった。

巨匠が4人いるということは、それぞれのファンが間違いなく存在する。
当たり前だが、それぞれが輝く姿を見にきたお客が多い。期待値がそれぞれにあるはずだ。
要は、バラバラの顧客層で会場が満員御礼という状態だ。これはなかなか大変なのだと思う。
真面目な演技だけでは、芸人のファンは納得いかない。逆はイメージが崩れる。

演目を見終わった感想は、ずばり、なんとももの凄いものを作り上げたな。これだ。
4つのジャンルが混じり合っている。例えば巨匠全員がモノマネを流れの中でやっていた。
心を震わすシーンを芸人が真面目に演じる局面もある。それぞれの巨匠の奥行きの深さが凄い。
ジャンルを跨いだ部分のクオリティが流石と思わせるし、本職の部分は極みと言うしかない。

誰にとって一番アウェイかといえば、やはりモノマネ芸人だったと思う。
なにせ、喜怒哀楽のギャップなどあまり必要ないからだ。普段はただただ笑わせている。
その巨匠だけが出ているシーンでは、モノマネをやっていてもお客は真剣に見入る。
馬鹿笑いして欲しいネタ、普通なら馬鹿笑いのネタを、凝視してしまっているのだ。

普通なら折れてしまうかもしれない不思議な状況。巨匠はこれを状況を打開する技を繰り出した。
最初は、軽く真面目に見るもんではないですよと、セリフの合間にふと。そのまま演技を続ける。
次の出番では、演技を中断して、お笑いの中でマジの注意喚起。でもすぐさま反応を笑いに。
1分も経たないうちに、観客に観劇の仕方を伝えきってしまった。なんとも凄い人だろうか。