サーキット。

コロナ前はサーキットに行くのが一つの楽しみだった。耐久レースだ。
ヘルメットを被り、4点シートベルトをして、ロールゲージのある車にスーツで乗り込む。
あ、グローブもはめる。最後はハンスと呼ばれる衝突時の首の位置を固定する装置だ。
装備が揃えば一定の安全性は担保される。仮に火が出てもスーツは燃えないのだ。

まずは予選だ。メンバーの中でも速い人が出ていく。とはいえみんな素人だ。
ポールポジションを取ってやろうなど夢にも思わず、安全に帰って来ることを考える。
ガソリンも満タンのまま。少しでも軽くしようなどとは思うこともない。
暑ければエアコンさえかけてしまうという感じだ。ギリギリ縮めようなど思っていない。

それでも爽快だし、楽しい。同じような感覚で参戦するチームもあるのだろう。
決して最下位のタイムになることはなかった。まあ、後ろから5番目くらいな感じだ。
少し休むと本戦が始まる。グリッドに予選のタイム順に並ぶ。写真撮影のタイミングでもある。
5分も経たないうちに、いよいよシグナルがグリーンになる。レースが始まるのだ。

多くの場合、久しぶりのサーキットだ。故にまだまだおっかなびっくり。タイムは遅い。
周回を重ねるごとに少しずつタイムが縮まっていく。落ち着いてくるのだ。
ただ、しばらくするとまた大変な時間になる。セミプロの人達が周回おくれにしてくる。
後ろから抜きに掛かられたら道を譲るのがルールだが、これはこれでなかなか大変だ。

バックミラーを見ながらベストラインを開けていく。タイミングが合わないと単なる邪魔な車だ。
自分の速さがどのくらい違うのかも分からない。抜かれるのはドキドキだ。
でも前に誰もいないととても楽しい。自分の思い描くラインをトレースできるのだ。
ふと、こんな記憶が蘇った。そうだ、またレースをやってみようか。ちょっと考えてみる。