ゆらぎ。

昨日は埼玉の精密金属加工の企業を訪問した。2日連続で凄腕の職人に出会った。
工作機械の性能をフルに引き出す独自の方法論を構築してきた天才だ。
キーワードはゆらぎ。人口構造物を含む自然界に存在するものにはゆらぎがつきもの。
様々なもののゆらぎが重なりあった結果が最終的な精度を決める。そんな感覚だ。

波動という表現も使っっていた。共鳴現象などで一般的ないわゆる波の重なりだ。
波は増幅したり減衰したりする。波の長さという概念もあるから時間と共に変化する。
こんなことを頭に浮かべながら、視野に入るもの全てがゆらぎとその重なりに見えるのだろう。
ゆらぎという独自の物差しを作って、物事をそれに当てはめていく。そこが基本だ。

この基本があると、何をすべきかが明らかになるのだろう。大きなゆらぎをまず探す。
そのゆらぎを元から断つ方法はなにか。加工の最後の最後まで揺らがない状態をどう生み出すか。
加工密度という言葉があった。これも恐らくゆらぎの大きさと関係があるのだろう。
平面より加工の多い面の方がゆらぎの要因が多い。材料自体の剛性も変わる。奥が深い。

基本に照らして、ギャップの大きいところを探す。そのギャップの発生源を見極める。
こんな作業の繰り返しなのだろうか。手順と方法でゆらぎの重ね合わせを最小にしていく。
職人には、ゆらぎを最小にするための一筋の道が自然と目の前に現れてくるのだと思う。
故に、同じ装置と道具を使っても、生み出される加工品の精密度は明らかに変わっていく。

日常生活の中で、様々な人の活動や社会の事象が同じ形に見えることが多い。
ゆらぎ、波動といった本質的なことが同じと捉えた時にそう見える。フラクタルだ。
とても複雑だった事象がとてもシンプルに美しく見える瞬間だ。ものでも同じだった。
塩も金属もまったく同じだ。自然界にあるありとあらゆるものに適用できる真理なのだろうか。