アーティストが対話や討論、コミュニティへの参加や協同といった実践を行なう。
美術館やギャラリーといったアートワールドの外に、どんどん染み出していく。
作者および作品という概念を脱して、参加や対話そのものに美的価値を見出す。
要するに、SEAは、土地の日常にアートを染み込ませていく。そんな取り組みなのだと思う。
大分県、別府。ここには「BEPPU PROJECT」なるものがある。SEAを実践している。
立ち上げのきっかけは、現地の有志が町おこしのために立ち上がって始めた路地裏散策ツアーだ。
土地に根差したい、その人たちに無性に会いたくなったという想いに、共鳴したという。
その土地に小さな芽を見つけ、育むことで、大きなうねりを生み出すという意志の力が生まれた。
「田舎じゃ無理」は、言い訳!そんな声もあったという。シャッター街もあり、やばいとも感じた。
でも、シャッターの向こうに素敵な空間があり、開けるのを待っているという「妄想」が力を生んだ。
2005年に立ち上げ、4年後にはアートフェスティバルを開催したいと目標を立てた。
本当に面白いことをすれば、世界中から人々が来てくれる。そう信じて突き進んだという。
初期のプロジェクトは、学生ボランティアによる街の商店街の徹底した調査だ。
学生たちはアパートを借りて住み始め、大家さんとの対話も始まる。ご飯をご馳走になる。
更には、商店街の掃除を手伝ったり。街とBEPPU PROJECTが繋がっていったという。
商店街の人たちが空き店舗を提供してくれ、クリエイティブスペースの賃貸の仕組みが生まれた。
念願の別府現代アートフェスティバル〈混浴温泉世界〉も目標通り、2009年に開催された。
「アートゲートクルーズ」では、別府という海原をクルーズするように、観客は作品と出会う。
家並みがひしめく路地裏や独特の歓楽街、湯治場の風情など、温泉以外の魅力も満載だ。
既に1000ものプロジェクトが生まれた。街にアートが溶け込んでいる。持続性が生まれているのだ。