経営のバランスに興味を持つ

毎年毎年、コストをゼロから見直して削減余地を探っていく。絶え間ない企業努力だ。
日本企業の原価低減力は凄まじいものがある。自動車産業の高収益にはこの努力が欠かせない。
無駄な人の動きはないか、稼働の低い装置はないか、無駄にしている材料はないか。
工場に入った材料をより少ないエネルギー、人、装置で製品に変えて素早く売り切る。徹底している。

この絶え間ない努力で生み出した収益を、自動車なら先進技術の開発やMaaSなどへと投下している。
既存事業で生み出した大事な収益を最大限活かすべく、付加価値の創出、新事業の実現に尽力する。
一連の新たな挑戦にはどのくらいの投資が必要で、それを既存事業でどう稼ぐか。
そろばんを叩きながら、効率化と再投資のバランスを組み立てる。経営の腕の見せ所だ。

もちろん、投資資金は収益のみが源泉ではない。資金調達方法には多様な選択肢がある。
資金の用途に照らして、それぞれのメリット、デメリットを見極め、どれを使うか意思決定をする。
いずれにせよ、何より重要なのは何にどのくらいの資金を投入して、どんな事業を組み立てるかだ。
効率化であれ、資金調達であれ、必要資金が用途と共に見える化されると俄然本気度があがる。

この話は資金に限ったはなしではない。他の経営資源であるヒト、モノでも同様だ。
どんな事業を組み立てたいかで、どんな機械や装置がいるか、既存事業からどう融通するかが決まる。
人は特に重要だ。人数で考えても意味がない。新たに挑戦する事業に適した人材の見極めが必要だ。
既存事業の中で最適な人材を見つけたら、その人がいなくても回る仕掛けをつくり抜擢する。

こんなサイクルが実現できると企業は強い。既存事業を活かしつつ、新規事業が確度高く立ち上がる。
大事なのは、新規、既存の両事業に携わる人が、このサイクルを意識しながら活動できるかだ。
細かいところまでとは言わない。大きなヒト・モノ・カネの動きを掴んでいれば良いと思う。
デジタル技術も使いながらサイクルを見える化して共有する。創意工夫が引き出せる気がする。