生産性や効率性の高さを示す指標に「歩留まり」がある。成功した良い事態を意味する。
歩留まり率は、原料の投入量から期待される生産量に対して、実際に得られた良品の生産量の比率だ。
不良品となり使えないものが少ない方が良いので、歩留まり率はもちろん高い方が良い。
歩留まり率100%はなかなか実現できないが、多くの場合、90%の後半もしくはそれ以上を実現している。
仮に歩留まり率が90%だとする。10個に9個の良品ができている状態だ。1個は不良品だ。
すると、原価は良品の9個に10個分のコストが掛かる計算になる。つまり原価が10/9倍(1.11倍)になる。
80%の場合は10/8倍(1.25倍)。50%だったら10/5倍(2倍)だ。歩留まり率が収益に効くのがよくわかる。
現場の士気にも関わる。50%だと、作っても作っても半分は不良品だ。不良品の山に悲しくなる。
ものづくりの現場では、歩留まりが高くできない仕事は受けないのが慣習になっていると思う。
少なくとも歩留まり率が9割程度になることを見越して、値付けがされているからだ。
既に歩留まり9割を十分超える能力を持っているかどうかで、その仕事を受けるかどうかが判断される。
難しい際どい仕事もあるが、それぞれの現場の持つ技の違いで、歩留まりを高くできる受注先に決まっていく。
稀に、どこもサジを投げる仕事がある。どこがやっても歩留まりが数十%。到底コストが合わない。
発注側もその仕事の難しさを理解し始める。でも発注金額もいきなり5倍にもできない。
こんな時に現れる会社があるという。「2-3倍の金額で発注してください。それならやります!」だ。
普通では手をつけない仕事だが、ちゃんとした考えがある。収益を生むカラクリがあるという。
答えは簡単だ。難しい仕事なので、歩留まりを90%までは高められない。でもまだまだ高められる。
つぶさに工程を見ていけば、7-8割までなら上げられる。8割に上げて高収益に仕立てるだ。
俄然、職人の魂がうずくらしい。プライドをかけて8割越えを実現する。壁を乗り越えていくのだ。
難しい仕事を受ければ受けるほど、匠の力が鍛えられる。こんな闘い方もある。見習いたい。