密度の生み出す力

一単位あたりの量で、体積や面積が異なるものの重さや混み具合の性質を比較できるのが密度だ。
人口密度であれば、面積あたりの人の数、物質の密度であれば体積あたりの質量となる。
これを転じて、最近、エリアや空間あたりの見所の数を、魅力密度と使うことが多い。
エリアに見所が多ければ、当然ながらそのエリアの魅力密度があがり、魅力的なエリアとなる。

そこに行けば、あちらこちらに見所があるので、思わず周遊してしまう。長く滞在してしまう。
そもそも、そこに行きたいという気持ちも湧きやすくなる。情報の届く量が違うからだ。
ガイドブックでそのエリアに割かれるページ数は明らかに増え、行きたい場所が見つかる。
たくさんの人が行って、それをSNSに上げればさらに情報は増え、情報発信の好循環が回る。

ここでひと工夫できることがある。見所の打ち出し方だ。テーマやストーリーを作ってみる。
要するに何かのテーマやストーリーで、点在する見所をつないでいく。点を面にしていくのだ。
もっと能動的に、テーマやストーリーにあった見所を新たにつくることに挑戦する。
既存の見所の打ち出し方を変えてもいい。そうしたことを通じて、魅力密度を高めていく。

テーマやストーリーがあると、それに共感する人々にとっての魅力は増幅する。
つまり一つ一つの見所の魅力が高くなり、さらに多数の見所が束になって見えてくるのだ。
訪れた人は、深く魅了されたことをSNSに発信して、その体験を求めて人が集まってくる。
ただ、そのテーマに響かない人にとっては、へんな所がいっぱいあるエリアとなる。

注意すべきは、テーマやストーリーがマニアックになりすぎないことだ。バランスがいる。
それなりの間口を持てるようなテーマを選ぶとともに、多数の見所の持ち方で工夫する。
初心者向けの見所、中級者、上級者、マニア向けの見所。こうすると周遊する見所を選択できる。
あ、でもまずは来訪したくなる気軽なテーマが良いと思う。見所を増やし、魅力密度を高めてみたい。