磨き上げとマネタイズ。

人々が築き上げてきた歴史や文化は、当たり前だが、永遠に続くというわけではない。
古民家も人が住んでいるうちは輝きを放っているが、人が住まなくなると途端に老いる。
日々の掃除や何気ない気遣い、そしてメンテナンスが古民家の命を支えているのだ。
未来に繋ぎたいものにはしっかりと手を入れていく。そんな活動が必要な気がする。

祖父の家も典型的な古民家だった。周辺一帯には農地もあり、立派なお屋敷だった。
戦争も潜り抜け、祖父が鎌倉に移り住むまで、100年以上現役を続けていた。
とても小さい頃、数回入った場面が甦るが、とにかく大きく包み込まれるようだった。
社会人になり、出向く機会があったが、無数の竹が屋根を貫いていた。入ることもできなかった。

その後、祖父が亡くなったこともあり、程なく取り壊され、たくさんの新しい家がたった。
近くに高速道路のインターができて、とても便利な場所になったからだ。観光施設も生まれた。
でも、その場所の雰囲気はがらっと変わり、懐かしい田園風景は、もう過去のものになった。
少し複雑な気持ちもあったが、その後忙しさもあり、いつの間にか祖父の家のことは忘れていた。

この6-7年、古民家のある街に出向くことが増えた。道に古民家が立ち並ぶ趣がある場所だ。
人が集い、おしゃれなカフェや宿が立ち並び、街に活力を感じる。なにか空気も違う。
単純な古民家のリフォームではなく、新たな魅力がたくさん加わり、あちこち立ち寄りたくなる。
古民家に何を足すと、どう磨くと、人は魅了されるのか、街が分かっているように思える。

あ、祖父の家はどんな形で磨き上げると、人が集い続ける場所にできたのだろうか。
農業体験や品種改良体験。冬の農地を使ったアクティビティや風景と食の融合。妄想は続く。
磨き上げに掛かる費用と、マネタイズで得られる売上。このバランスを生み出すことが大事だ。
それぞれの土地で、それぞれの規模でバランスを取る。日本のあちこちに輝きを生みたいと思う。